小ネタ3 - .hack//G.U.祭り
【ハセヲ/バルムンク】
クリア記念ですので、ネタバレ的要素あり




 【.hack//G.U. /ハセヲ】

「おいおいハセヲちゃぁん、一緒に冒険してくれるって言ったんじゃないの?」
「……悪ぃ、すまねえ、許せ」
 どこかの主人公がヒロインに謝った時の台詞を、彼は本当に申し訳なさそうに私に言って来た。『二人で冒険しよう』と私に言い出したのは、彼である。
 しかし彼の背後には、私よりもハセヲよりも背の高い、すらりとしたモデル体型設定の美青年(ただの美青年ではなくヴィジュアル系が入っている)PCが立っていた。
「ハセヲが行くなら、僕も行く……それだけさ」
「ちょっとちょっと! エンデュランスは来ないで良いってば! ハセヲは今日はあたしのモンなんだから!」
「さ、ハセヲ。行こう……」
「無視すんなこの野郎!!!」
 クールビューティと言えば聞こえの良い、喜怒哀楽に乏しい(ハセヲ以外の前では)顔の持ち主は、ハセヲの手を握り締めてカオスゲートへと歩み寄る。
「ま、待てエンデュランス。今回は一応、メインはアイツだから。アイツも連れて行かねえと、冒険する意味が無いんだよ」
「……ハセヲは、僕と一緒に冒険するの、嫌?」
「いやそう言うわけじゃなくて」
「なら、良いじゃない」
「良くないわこのナルシー!!!!」
 どこからともなく現れたハリセンで、私は思い切りエンデュランスの頭を殴った。と言うのに、彼は動じることなく、私の存在を華麗に無視する。
 ――こいつ、やるな……!
と、普段ならば思うのだが、今日に限っては少し事情が違う。何故なら今回はハセヲ『から』直々に、『二人で』遊ぼうと言われたのだ。今回ばかりは、この優男に譲るわけにはいかない。
 私は大きく息を吸い、エンデュランスを指を差した。
「いい、エンデュランス! アンタがハセヲのことを好きなように、あたしもハセヲのことが好きなのよ! ひとりだけハセヲ独り占めしようなんて、そんなのお天道様が許しても、あたしが許さないんだから!!」
 ハセヲの「古い言葉使うなよ」と言うツッコミには耳を塞ごう。真っ赤な顔をしているハセヲは、SS【スクリーンショット】に収めておこう。
「……キミもハセヲが好きなの?」
「そうよ、ハセヲのこと大好きよ! みんなだってそう、みんなハセヲのこと好きだからこそ、みんなハセヲに付いて行ったのよ!」
「……いや、それは違うだろ。八咫とかパイとかはそれが仕事っつーか……」
「ハセヲ、シャラップ!! 君はもっと自分の魅力に誇りを持ちなさい!」
「何だよ俺の魅力って」
 ハセヲはぶつぶつと不満げに呟いている。魅力どうこうよりも「黙れ」と言われたことの方に腹が立っているらしい。彼は本当に自分の魅力を理解していないようだ。無自覚な魅力ほど罪なモノはない。
 最も、自覚されて悪用すると言う展開になられたら、困り者だけれど。
「……つまり僕とキミは、ライバルと言うこと、だね」
「好敵手でも相棒でも好きな漢字を当てはめても良いわよ」
「なら、僕がキミにハセヲを譲る理由は無くなった」
「はい?」
「行こうハセヲ、僕と一緒に永久の自由を掴もう」
「こ、この電波ァアア! ハセヲの話もあたしの話も総無視かこん畜生!」
「ハセヲの話は聞いているよ。キミの話も聞いてあげたじゃない。そしてこれが僕の結論。文句は言わせない。僕はハセヲと一緒にいるんだ。それが僕の運命。僕のさだめ。キミもまあ、連れて行ってあげないことはないけど?」
 エンデュランスの端整な顔が、少し歪んだように微笑む。
「喧嘩売ってるってワケ? 上等じゃない、その喧嘩買ってあげる!!」
 ハセヲは呆れ果てたのか諦めたのか頭を掻いてため息を吐いた。カオスゲートから、人が入って来る。志乃さんだった。エンデュランスと視線を逸らすと負けそうな気がして、逸らすわけにはいかず志乃さんに視線を送ることも出来ない。ハセヲと志乃さんが、何か話をしている。志乃さんが、ハセヲと手を繋いだ。そのままカオスゲートに消え……
「ってちょっと待てええええ! エンデュランス、今すぐハセヲの後を追うわよ! 志乃さんに、ハセヲ取られちゃった!!」
「……やっぱり、彼女がラスボスのようだね」
「行くわよ! Σサーバ―――――

どこかの主人公=スクライドのカズマです
そしてこれはハセヲ夢か?エン様夢っぽくない?志乃さんは素晴らしい人です




 【.hack//G.U. /バルムンク】

 こぉこぉと、わずかに口元から呼吸音らしきものが聞こえて来る。まるで、病院で人工呼吸器を着けられている患者さんのような音を、私はしっかりと聞き取るために、耳を澄ませる。一定間隔で流れるように耳に入る、彼の呼応。生きているみたいだ。でも、彼は『The World』の生粋の住人だった。

「……な、何でここ、あ、いやここにいてもおかしくはないんですけどその……この人がいるんですか? ハセヲさん」
 ハセヲさんは面倒臭そうに(おそらく、一緒にパーティを組んだ人間全員に言われたのかもしれない)頭を掻くと、事情を大雑把に説明してくれた。
 私が目を点にして見ているだろう『人物』は、ここがいくらネットスラムと言う『違法街』とは言え、似付かわしくない容貌である。AI【人工知能】。NPC【ノンプレイヤーキャラクター】。かつて敵対する破目になった存在。彼を言い表す表現は、探せばまだまだありそうだ。
「っつーわけで、コイツ以外にもカイトとオルカって言う奴のメンバーアドレスも貰ってんだ。今度そいつらとも遊ぶか?」
「え、あの……えーと、ちょっと頭痛くなってきました……。彼ら相手に身構える必要は、もう全く無いってことです、よね?」
「ああ。なぁバルムンク、こいつのこと覚えているか? 一度対峙したことあるんだが」
 ハセヲさんに促され、バルムンクさんの顔がこちらを向く。どきり、と心臓が跳ねた。重く厚い前髪で隠れているが、蒼炎のカイトのようなぎょろりとした、あるべきところにあるだろう瞳が、私を凝視しているのではないかと錯覚してしまう。いや、錯覚ではなく――凝視しているのだ。
 やがて彼は、首をわずかに傾げると小さな唸り声を上げる。
「そうか、覚えてないか」
 何故ハセヲさんは意思疎通できるんでしょうか。
 申し訳なさそうに唸り声を上げているバルムンクさんを見ていると、こちらが悪いことをしたような気になってしまう。
「あの、気にしないでください。私は一般PCですから、記憶に残っている方が不思議ですよ。ですから、気にしないでください。ね!」
 嬉しそうに、唸っているように聞こえるのは気のせいでしょうか。
 フィールドに出てから、私はハセヲさんに囁き【ウィスパー】をかけました。バルムンクさんはどこを見ているのか分かりません。空を見上げているようにも見えます。ボロボロの翼を持った彼が空を見る、なんて何だか意味深です。
「何だか、NPCって感じはしませんけど……喋らない以外に」
「欅が言うには『結果的にAuraが生み出したAIなのだから、感情があるのは不思議ではない』そうだ。だから案外、リアルに人がいないってだけで、俺らと大差ないのかもしれねえな」
「…………不思議ですね。リアルがないのに、生きているなんて」
「ここがあいつらの現実【リアル】なんだろ」
「……そ、っか」
 私たちが体感出来ないそよ風を、彼は感じ取っているのかもしれない。PCが決して理解することの出来ない水の冷たさや火の温かさを、NPCの彼は理解しているのかもしれない。
 もしかすると彼らは、『The World』に最も愛された人たち。
「なあ」
とハセヲさんは一息置いてから、困ったような顔で私に声を掛けてきました。
「もしかして、バルムンクとパーティ組むの嫌だったりすんの?」
「嫌じゃないですけど……そうですね、例えて言うなら、PKされた人と一緒にPKKしている、みたいな違和感があって……。でも、もう関係ありません!」
「へ?」
「アプドゥ!」と私は自身に移動速度補助呪文【スペル】を掛けると、ぼんやりと空を見つめていたバルムンクさんの手を強引に掴んだ。厚い前髪の奥から、ぎょろりとした目が丸くなっているのが一瞬目に入る。
「あ、おい! どこ行くんだよ!」
「どっちが先に獣神像前に着くか競争しましょ! ハセヲさん強いからひとりで平気ですよね!」
 そう言い残し、私は駆け足でハセヲさんから距離を取る。背後からハセヲさんが「待てよ!」とか「おいこら聞いてんのか!」とか言っている声が聞こえるが、全て無視する。
 やがて声が聞こえなり、後ろを振り返ってもハセヲさんの姿は見えなくなっていた。もしかすると、追うのを諦めて歩いているのかもしれない。強く握っているバルムンクさんの手が視界に入り、一気に私の中で気まずい気持ちが湧き上がって来る。
 や っ て し ま っ た 。
 初対面の人相手に、私は一体何をしているんだろうか。慌てて手を離し、何度も何度もバルムンクさんに頭を下げる。
「ご、ご、ごめんなさい……! つい、その調子乗っちゃって、あの、えっと」
 PCモーションだけでなく、リアルの私自身も一緒に頭を下げてしまう。気持ちが気持ちだからか、つい、リンクしてしまうね。
 さて置き続きを言い淀んでいると、バルムンクさんは喉から声を絞り出すように唸りながら、私に手を差し出して来た。つぎはぎだらけで所々が黒く欠けた手の平と、顔に交互に視線を送る。
 言葉にはなっていないが、強弱の付いた呻き声がかすかに聞こえて来た。
「……良いんですか? 握ったままでも」
 気にするなと言いたげに、こくりと小さく頷かれる。もしかして彼は、先ほどの『覚えていない』と言ってしまった(唸ってしまった)ことに関して、責任などを抱いてしまっているのだろうか。
「ごめんなさい……。ありがとうございます」
 そっと軽く、彼の手を握り締める。目尻に涙が浮かびそうだった。PCに反映されないことぐらい分かっているのだが、つい顔を覆いたくなってしまう。
 だが、そんな私の感傷的な感情を一気に消してしまうような行動が起きた。
 バルムンクさんは『快速のタリスマン』を瞬時に使ってから、強く私の手を握って駆け出したのだ。先ほどの『アプドゥ』の効果が切れているからか、私のPCの足が解れそうになっているのが三人称視点で分かる。正直、笑いそうだ。――これは仕返しだったりするんだろうか?
 獣神像のある場所への鍵である証が入っている宝箱を守るモンスターをなぎ倒して行き(最も、バルムンクさんが即効片付けてしまうので、私の出る幕は全くと言って良いほど無い)、獣神像へと向かう。タリスマンの効果も切れ、ゆっくりとした足取りだ。
 彼の名前を、呼びかける。
 彼は立ち止まり振り返り私をじっと見て、首を傾げた。
「何でもありません、呼んでみただけです」
 また、不思議そうに首を傾げる。自分でも少し鬱陶しいことをしたと思いながら、麗らかな日差しが照らされるフィールドを散策していた。バルムンクさんと手を繋いだままで。このフィールドの草の匂いは、風の温かさは、日差しの強さは、私のPCの手の感触は、彼に伝わっているのだろうか。
 まだ、何だかんだ言ってももぞもぞとするけれど――悪い人では、ないんだろう。こんな、ゆったりとした速度でも良い。彼たちのことを理解できる日を、必ず迎えてみよう。
 歩くようなはやさで、彼らの『現実』に絶対、私は触れてみせる。

 ちなみに。「見つけたァァアアッ!」と、腹の底から搾り出したような怒声を浴びせられたのは、獣神像に着いてすぐのことだった。

ヒロインはきっとThe Worldオタク

無事クリアできた記念で、妄想を具現化しました
ちなみに私は無印では強烈なバルムンク贔屓でした……
G.U.でも結果的にそうなりました……

07.04.01